糖質制限の第一人者である江部康二先生におかれましては、以前から以下のようにブログで主張されてました。
大腸の唯一のエネルギー源は短鎖査脂肪酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸など)です。食材としては、バターくらいにしか含まれていません。
従って、ヒトは摂取した食物繊維を大腸の腸内細菌(酪酸菌など)が餌にして酪酸などの短鎖脂肪酸を作ることで、大腸のエネルギー源を確保していると考えられます。従って、食物繊維の摂取は、ヒトにとって必須と言えます。
尊敬する江部先生ですが、この主張には到底納得できません。
「大腸の唯一のエネルギー源が短鎖脂肪酸である」という説ですが、この根拠として江部先生が挙げられているのが、
「治療に活かす!栄養療法はじめの一歩」清水健一郎 著羊土社 2011年2月
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という本のみですが、これは一般向けの本であり専門書ではありません。少なくともこの主張を裏付ける医学論文を呈示すべきです。ちなみにこの本はAmazonで3564円という結構なお値段です。地元の図書館で検索しても置いてませんので、中身を調べるには購入するしかないのですが・・・。そもそも大腸のエネルギー源という場合の大腸とは大腸粘膜のことなのか、筋層や漿膜、腸間膜も含めたすべての大腸を含むのでしょうか?
最近のコメントで麻酔科医先生よりの質問(食道癌手術で結腸再建した場合に食物はすぐに通過するであろうが大腸は萎縮や壊死にならないのは?)に対して
生体内の普通の状態の大腸は、腸内細菌が作った短鎖脂肪酸(酪酸)と、血中を循環しているβヒドロキシ酪酸(短鎖脂肪酸、ケトン体)を両方エネルギー源としていると思います。
例えばあるていど長期に絶食中などには、食物繊維はないので、腸内細菌は関係なく、血中のβヒドロキシ酪酸(短鎖脂肪酸、ケトン体)のみを エネルギー源にしていると思います。
ということは、そもそも食物繊維を腸内細菌が分解してできる短鎖脂肪酸を期待しなくても「血中を循環しているβヒドロキシ酪酸」を利用すればいいわけで、江部先生の「食物繊維の摂取はヒトでは必須である」という主張は成り立たなくなります。
食物繊維をほとんど摂らなかったであろうアラスカエスキモーなどは大腸壊死におちいるはずですが、その様なことは報告されてません。そもそも現代まで生き残ることはできなかったでしょう。消化管通過障害のため長期間絶食で高カロリー輸液を行っている患者でも大腸壊死にはなりません。臨床的経験からは食物繊維が大腸に必須とは到底考えられません。
私には「野菜は健康にいい!」という主張をするための苦しいいいわけにしか思えません。