人類史 書評

【書評】親指はなぜ太いのかー直立二足歩行の起原に迫るー:島 泰三 著

2015年7月10日

親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書)

非常に興味深い本でした。

人類が何を食べていたのかという疑問に対して「口と手連合仮説」から解き明かします。

他の動物では利用できない食べにくい植物を、手と口の形を変え、手と口の使いかたを変化させることによって、食べることができるようになったときに、その主食が開発され、その動物がしっかりしたニッチに落ちついていると言うことができる。

人類はあきらかに、類人猿よりもあごや歯という咀嚼器の頑丈な動物として現れている。

巨大な臼歯や厚いエナメル質やあごのすり潰しシステムは、肉を食べるという点ではほとんど意味がない。つまり、人類を含めて霊長類の歯は肉食にはまったく適していない。

第二、人類が穀物を主食とするのは農耕がはじまってからであり、それは熟しても実が落ちない特別な品種が選択されて栽培されるようになってからである。どの野生の禾本科(ムギ・イネなど)の草でも、実が熟すと穂がはじけて種子は落ちやすくなる。しかし、野生のコムギのなかには種子が熟しても穂がはじけず、穂にまとまったままのものが変種として生まれることがあり、このごく少数の例外を選び、拾い集めて、人類は紀元前7000年ころに中近東の各地で栽培をはじめたのである。この栽培がはじまる前に野生のコムギを収穫した遺跡は残されているが、それでも1万年前であり、それまでのあいだに人類が草の種子を主食にした証拠はない。

初期人類の手と歯は、骨を主食にするために必要不可欠の条件をすべて満たしている。どんな大きな骨でも砕くことができる石を握りしめる大きな親指のある手と、硬度4の骨を砕いてすり潰すことのできる硬度7(水晶と同じ硬さ!)のエナメル質に厚く覆われた歯によって前後左右上下のすり潰し運動を可能にした平らな歯列こそが、初期人類の主食である骨を開発した道具セットである。

この著者の仮説によると人類の祖先は石をつかんで骨を砕いて「骨を食べる」ことでニッチな主食とすることで生き続けてきたという事です。

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