【書評】生命をつなぐ進化の不思議ー生物人類学への招待:内田亮子 著

2015年7月24日

星二つの評価(自分で)ですが、以下の記載などは私が以前から感じていたことと同じであり、読み返してみてもいい本だと思います。

農耕による食料生産の開始は栄養状態の改善をもたらしたと予測しがちであるが、実際には、栄養失調が増加したことが骨格資料の病理分析から明らかになっている。・・・・・しかし、農耕で穀物中心の食生活になると炭水化物でお腹は満たされるので、多様な食料を食べることはなくなるのだろう。結果として、ビタミンC血病床の壊血病などの「栄養失調」の頻度が高くなってしまうのだ。

かつては老化はプログラムされた現象であり、個体が年老いて死んでいくのは集団の個体密度を下げ、世代交代を早めることで、変化する環境への適応を促進するためという考え方があったが、これは間違いである。そもそも野生動物の死は、捕食、病気、寄稿など外的な要因によるものが主であり、ほとんどが「年をとる」まで生きてはいない。老化と死に適応的な意義はないし、寿命を決定し老化を促進することに限定した機能をもつ遺伝子もない。

人間は長い生体期を持ち、ゆっくり瘻化する特異な生き物なのである。なお、先史時代や古代の人間のほとんどが50を過ぎては生きられなかったという従来の研究は、事実とは異なるという指摘が増えている。いにしえの人々も70代での死が一般的だった可能性が高いのだ。

よく、昔の人の平均寿命が40代とか50代とかであったというのを聞くと、あたかも50歳で老衰で死んでいたみたいなイメージですが、これは違います。昔の人は戦争や感染症などで死んでいたのであって40才,50才でよぼよぼになっていたわけでないのです。

 

  • B!