【野菜は食べるな】食物繊維と大腸憩室の関係 〜野菜を食べないから大腸憩室ができるの?〜

2016年8月17日

大腸憩室症という病気があります。

大腸の壁に”憩室”という外に飛び出たような”部屋”ができて

そこから出血したり可能したりして様々な病気の原因となります。

多いのが憩室出血や憩室炎です。

この大腸憩室は子どもにはほとんど見られませんが、加齢と共に多くなります。人によっては全大腸に多発している人もいますし、S状結腸だけにできている人もいます。

 ところで、この大腸憩室ができる原因については様々な説があります。一般的には「食物繊維をとらず肉食ばかりしていると大腸憩室が発生する!」というものです。

その根拠としては、西洋人と比較して菜食がおおい日本人には少なく、肉食がメインの欧米人に多いという疫学的な調査によるものです。

そこから野菜や穀物を食べない→憩室ができる

食物繊維を食べないと→憩室ができる

肉ばっかり食べていると→憩室ができる

などという考えが導きされているようです。

はたして食物繊維を摂らないと憩室の原因になるのでしょうか?

それでは食物繊維と大腸憩室の関係について論じられた文献を紹介します。


 Peery AF, Barrett PR, Park D, et al. A High-Fiber Diet Does Not Protect Against Asymptomatic Diverticulosis. Gastroenterology. 2012;142(2):266–272.

米国において憩室症が引き起こす合併症は深刻である。この疾患に対する医療費は米国で年間$25億であると推定されている。多くの医師や患者は、高繊維食と便通良好が憩室症の発症を予防することを信じているが、これらはエビデンスに乏しい。我々は、低繊維や高脂肪食、赤身の肉の大量摂取、便秘、運動不足が無症候性の憩室症のリスクを増加させるかについて検討した。

方法:1998年から2010年にかけて、2104名の30-80歳の外来大腸内視鏡検査をおこなった患者について横断的研究を行った。食事と身体活動を評価

結果:予想通り憩室症の有病率は、年齢とともに増加した。食物繊維の大量摂取は、憩室症の有病率を減少させなかった。逆に、食物繊維摂取量を4つのグループに分けて検討すると、最も多く食物繊維を摂取したグループは、もっとも摂取量の少ないグループと比較して(95%信頼区間、1.13-1.50 prevalance ratio= 1.30)より憩室症の有病率高かった。全食物繊維の摂取量、穀物からの食物繊維量、水溶性食物繊維、および不溶性食物繊維において何れもリスクが増加した。便秘は危険因子ではなかった。週15回を超える排便をするグループは、週7回未満の排便のグループと比較して憩室症のリスクが70%大きい(95%信頼区間、1.24-2.34 prevalence ratio= 1.70)。脂肪または赤見肉の摂取も運動不足もどちらも憩室症との関連はなかった。

結論:高繊維食と便通の頻度の増加は、逆に憩室症の高い有病率と関連していた。無症候性の憩室症の危険因子についての仮説は再検討されるべき。


Song JH, Kim YS, Lee JH, et al. Clinical Characteristics of Colonic Diverticulosis in Korea: A Prospective Study. The Korean Journal of Internal Medicine. 2010;25(2):140-146.

韓国における結腸憩室症の研究

大腸内視鏡にて憩室症を調査

848人中103人(12.1%)に憩室症あり

60歳以上、高脂肪摂取、アルコール摂取は、結腸憩室症(p < 0.05)の存在と関連していた。一方食物繊維摂取とは関連はなかった


Strate LL. Nut, Corn, and Popcorn Consumption and the Incidence of Diverticular Disease. JAMA. 2008;300(8):907-915.

憩室症の患者に対してナッツ、トウモロコシ、ポップコーンの摂取を控えるように言われているが、そのエビデンスはほとんどない。今回ナッツ、トウモロコシ、ポップコーンが憩室炎または憩室出血に関連しているかを検討した。47,228人の憩室関連疾患がない男性に対して 調査した。18年間の調査で801例の憩室炎と383例の憩室出血が発生。ナッツとポップコーン摂取と憩室炎には逆相関を認めた。多変量解析において週に最低2回以上摂取する群と1回以下の群ではHRがナッツでは0.80、ポップコーンは0.72で有意。トウモロコシと憩室炎には関連なく、憩室出血または憩室症とナッツ、トウモロコシ、ポップコーンの関連なし。結論としてナッツ・トウモロコシ、ポップコーンの摂取と憩室疾患の関連はなく、これらの食物を憩室疾患の予防のために避けるという考えは再考されるべきである。


もちろん、食物繊維が大腸憩室に関連するという論文もたくさんあります。しかし、内視鏡検査にて発見される無症候性憩室症を含めると関連はなく、むしろ食物繊維をたくさん食べる方が憩室が多いという結果はある意味衝撃的ではないでしょうか?

  • 野菜(食物繊維)を食べすぎると逆に大腸憩室ができる

  • 便秘と大腸憩室は関連なし(そもそも野菜を食べないと便秘になるというのはウソ)


  • B!