健康診断を受けるとコレステロールの基準値から外れると病院で検査するように指導されます。
コレステロールの基準値については健診施設や病院毎に若干の違いがありますが、私は以前からこの基準値が必要以上に低く設定されていることを指摘してきました。
この基準値は一体誰が決めているのでしょうか? この記事ではコレステロール基準値について解説します。
健康診断でのLDLコレステロールの基準値
わががいつも受けている健康診断/人間ドックでの基準値は
ポイント
HDLコレステロール 40mg以上
LDLコレステロール 60〜140 mg/dl
となっています。
人間ドックや健康診断での基準値は健診施設毎に異なっている可能性もありますが、だいたいこんな感じだと思われます。
病院でのLDLコレステロールの基準値
わがが務めている病院での2020年の基準値は以下です
ポイント
HDLコレステロール 38〜90mg/dl
LDLコレステロール 65〜163 mg/dl
同じ病院でも4年前は
LDLコレステロール 70〜139 mg/dl
でしたので基準値が緩和されています。
学会での基準値
それでは日本や米国ではどうなっているのでしょうか?
日本動脈硬化学会
(動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2017 年版.日本動脈硬化学会,2017)
日本動脈硬化学会のガイドラインでは総コレステロールについての記載はありません。
LDLコレステロールについては
120mg/dl〜139mg/dlを境界型高LDLコレステロール血症
140mg/dl以上を高LDLコレステロール血症としています。
やはりLDLコレステロールは120を超えると境界域として引っかかってしまうようです。
日本脂質栄養学会
日本脂質栄養学会では以前から「高LDL-C値は長寿の指標であり、各種疾患予防にLDL-C値の低下を目標としない」という見解です。
日本人間ドック学会
日本人間ドック学会の2020年度版判定区分を参照してみます。
総コレステロールについての記載はありません。
ポイント
LDLコレステロール:
60〜119 A異常なし、
120〜139 B軽度異常、
140〜179 C要経過観察(生活改善・再検査)、
59以下または180以上 D要医療
HDLコレステロール:
40以上 A異常なし、
35〜39 C要経過観察、
34以下 D要治療
日和った日本人間ドック学会
米国
米国心臓協会(AHA)が2018年に出した「コレステロールガイドライン2018」にはどう書いてあるのでしょうか?
非糖尿病でLDL-Cが≧70-<190mg/dLで年齢40-75歳の動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)発症リスクのカテゴリーが4段階設定された。
低リスク(<5%):生活習慣の改善(Class I)
境界リスク(5-≦7%):リスク促進因子がある場合は中強度スタチン(Class IIb)
中リスク(≧7-<20%):リスク促進因子がある場合は中-高強度スタチン(Class I)
高リスク(≧20%):スタチンで治療前LDL-Cの50%以上の低下を目指す
ことが推奨されている(Class I)
要約するとLDL190未満で何らかのリスク因子が高いならばスタチンを!という事ですが、これが複雑すぎてとてもじゃないけど理解できません。
厚労省の正規分布を提示
厚生労働省のDATA 令和元年の健常人(コレステロール低下薬を飲んでいない人)LDLコレステロール値の分布DATAからグラフにしてみました。
男性より女性のほうが正規分布の山が右にずれているのがわかります。
これを日本動脈硬化学会の基準値に当てはめると
LDLコレステロール120mg/dl以上の境界型を含めた高LDLコレステロール血症は男性で41.5%、女性では52.8%となります。
そして、高LDLコレステロール血症は男性で19.5%、女性で28.3%です。
通常であれば正規分布の95%を正常域とするのが普通です。
ほぼ健常人の半数を異常としているのがわかりますね。
まとめ
- コレステロール基準値は相変わらず日本動脈硬化学会の基準値が使用され続けている。
- そしてそのLDLコレステロールの基準値は必要以上に低く設定されている
- 日本動脈硬化学会の見解が一般に採用されている理由は不明 日本人間ドック学会の抵抗むなし
- 基準値を低く設定すると脂質異常症という診断がなされ、結果製薬会社は儲かる